教えてドクター 「流涙症(りゅうるいしょう)」

流涙症(りゅうるいしょう)

 涙は、上瞼の外側にある涙腺からつくられています。水や油層、粘液成分であるムチンなどからできていて、眼球を保護したり、感染を防御したり、目の表面に栄養を与えるなどさまざまな役割があります。涙の大半は涙腺から分泌されており、まばたきをすることで目の表面に広がるのですが、10%は蒸発し、残りの90%はまぶたの内側の上と下にある涙点という小さな穴から、鼻への道である「涙道(るいどう)」を通って鼻のなかに流れていきます。
 泣いていないのに涙が自然とあふれ出て視界がぼやけたり、目やにがたまりやすくなったりするのが「流涙症(なみだ目)」です。涙で目のまわりの皮膚がただれてしまうこともあります。原因は大きく分けると二つあります。一つ目は、逆さまつげやゴミなどの刺激が原因で涙が出る分泌性(ぶんぴつせい)流涙です。涙が不足する病気であるドライアイで目が乾燥し、刺激を受けることで流涙となることもあります。これらの刺激となる原因を取り除く治療を行うことで、流涙は改善していきます。
 もう一つは、導涙性(どうるいせい)流涙といって、涙道が何らかの原因で狭くなったり詰まったりすることで涙があふれてしまう場合です。基本的には加齢による涙道閉塞といわれていますが、目の周囲のケガや鼻の病気、点眼薬の副作用などでも起こることがあります。そのほとんどは原因がわからず、若い人でも発症します。そのほかにもまぶたの機能異常や結膜のたるみなども原因となります。また、赤ちゃんにも流涙は見られることがあります。先天性のもので、1歳頃までにはほとんどが自然治癒します。1歳過ぎても治らない、あるいは涙嚢炎などを併発しているなどの場合は治療が必要になります。
 流涙症かどうかは検査ですぐにわかります。まず、涙の分泌される量が増えているのか、排水が減っているのかを細隙灯顕微鏡検査などで確認します。次に涙点から涙道に水を通す涙管通水検査を行い、逆流の有無を確認します。さらに当院では、内視鏡検査で涙道の状態を直接観察し、より詳細に閉塞部位を調べます。
 導流性流涙の治療は基本的に手術になります。涙道から0・9㎜の細い内視鏡を使い、閉塞部位を確認しながら閉塞している部位を治療し、チューブを挿入します。涙管チューブ挿入術は、局所麻酔で行うため、日帰りで治療できます。チューブは外からほとんど見えないため日常生活に支障はありません。通常2〜3ヵ月後に外来でチューブを抜去します。重症化して涙管チューブ挿入術がうまく行えない、再発を繰り返すなどの場合には、鼻の骨を削るといった大きな手術が必要になることもあります。その場合は、入院設備のある病院での手術になります。
 重症化すると治療も大変になりますので、悲しくないのに涙が出てハンカチが欠かせない、目やにが多いなど、気になる症状がある場合は早めに眼科を受診してください。
フリーペーパーmamacha2022年1月号より 

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