教えてドクター 耳垢

耳垢

 耳の穴から鼓膜までを外耳道といいます。鼓膜や外耳道から剥がれ落ちた表皮に、外耳道にある耳垢腺からの分泌物などが混ざり合ったものが耳垢です。耳垢には個人差があり、薄いかさぶたような乾性耳垢とねこ耳と言われる粘土のような湿性耳垢に分かれており、日本人の約7〜8割が乾性耳垢と言われています。米国の耳鼻科学会で、ほとんどの人は耳掃除が不要であるというガイドラインが発表されましたが、これは米国では圧倒的に湿性耳垢のタイプの人が多いためではないかと思います。
耳掃除をするべきかどうかですが、基本的に耳垢は、通常は自然に耳の穴の外側へ出る仕組みになっていますので、家庭で無理に取るのではなく、自然に出てきたものを掃除する程度で充分だと思います。なので、頻繁に耳掃除をする必要はないでしょう。耳垢を家庭できれいに取り除くのはけっこう難しいものです。耳かきや綿棒で耳垢をかえって奥のほうに押し込んでしまって外耳道を完全に塞ぐ耳垢栓塞になったり、外耳道を傷つけて外耳道炎や耳せつ(耳のおでき)の原因となったり、鼓膜を傷つけて鼓膜穿孔をつくってしまうこともあります。耳垢栓塞になると、耳の聞こえが悪くなり、成長段階の子どもの発音に影響を及ぼすこともあります。お風呂やプールの後で、耳をいじると、外耳道炎になりやすいので注意が必要です。
 子どもの耳掃除を頻繁にするより、耳の表側や裏側をやさしく洗ってほしいと思います。いまだに、耳に水が入ると中耳炎になると思っている方がいますが、耳に水が入っても中耳炎にはなりません。垢のかたまりなどがあると湿疹の原因になるケースもあるので、やさしく洗ってあげましょう。とはいえ耳に水が入ると不快感があるので、耳のなかにシャワーなどで水をかけるのはやめてください。耳の表面に石鹸などの泡をつけ、タオルでやさしく拭いたり、泡などはつけず濡れたタオルで表面を拭いてあげたりするだけで充分です。まだ、寝返りがうてない赤ちゃんは耳に湿疹ができやすいので気をつけてください。
 耳掃除をしたい方は2週間に1度くらい清潔な綿棒で耳の入り口に出てきたものを取り除いてあげましょう。耳の穴が狭くなっていたり、大きく曲がっていたり、あるいは耳垢が奥深くにあり取りにくい場合は、無理をせず専門医に任せてください。耳鼻咽喉科で除去する場合は、外耳道や鼓膜を傷つけたりしないように、またできるだけ痛みの無いように細心の注意を払います。鼓膜内視鏡や顕微鏡で見ながら、耳垢鉗子や耳専用の器具でつまんだり、細い吸引管で吸い取ったり、硬い耳垢のときは軟らかくする耳垢水という薬液を耳の中に1日に数回入れ(点耳)、ふやかしてから洗浄・吸引する方法(耳洗)で耳垢を除去します。固着しているような耳垢栓塞は数日間にわたってゆっくりと時間をかけて除去する場合もあります。
 子どもの場合、急な発熱があると中耳炎を疑います。鼓膜を見ようとしても、耳垢で鼓膜を確認できず、取ろうとしても炎症があり痛いために泣きわめいていて耳垢をとることができないこともあります。いざというときのために日頃から気にかけましょう。
フリーペーパーmamacha2021年11月号より

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