一般的に溶連菌感染症と呼ばれる病気の正式名称は「A群溶血性連鎖球菌感染症」といいます。A群溶血性連鎖球菌(溶連菌)は、1年を通して存在していて、喉から侵入して炎症を引き起こす場合がほとんどですが、肛門の周囲や首、へその粘膜からも侵入することがあります。喉から菌が侵入した場合は、「溶連菌性咽頭・扁桃炎」と呼ばれる症状が発症し、発熱や咽頭痛など、風邪のような症状が見られます。しかし、くしゃみや咳は出ないのが特徴です。咽頭は赤黒くくすみ、表面がザラザラしているように見え、発症後8時間ほど経過すると、舌にイチゴのようなツブツブが見られることもあります。また、皮膚やへその粘膜に菌が付着した場合は、「溶連菌性皮膚炎」と呼ばれ、発疹が首や胸から広がり、24時間後には全身に広がります。 溶連菌感染症の治療は抗生剤の服用が中心です。5日から10日間服用を続けますが、実は溶連菌自体は服用を開始してから24時間程度で感染力はほとんどなくなります。それに伴って発熱や喉の痛み、発疹などの症状も改善されるため、幼稚園や学校も抗生剤の服用開始後24時間以上経過すれば登園、登校ができるようになります。 ではなぜ10日も抗生剤を服用し続けなければならないのか。それは、溶連菌感染症には「糸球体腎炎」や「リウマチ熱」など、いくつかの後遺症があるからです。これらは、溶連菌などの連鎖球菌の感染に対して処置をしなかった場合に発症する恐れがあります。溶連菌性咽頭炎の場合は約2週間後、皮膚感染症の場合は約3週間後に腎炎、むくみや血尿、頭痛、食欲不振などの症状が見られます。小児科では溶連菌感染後、治療と後遺症の予防を兼ねて抗生剤を処方するほか、糸球体腎炎の発見のために尿検査を行っている医院も多くあります。検査を受けるなどして、溶連菌感染症以外にも後遺症に対してもケアすることを心がけましょう。 幸い現在は溶連菌の診断・治療の環境が整っています。抗生剤がなかった頃、溶連菌感染症は猩紅熱と呼ばれ、法定伝染病に指定され恐れられていました。やがて抗生剤の開発に伴って治療が容易になったことから、1998年に法が改正され、法定伝染病から外れ、外来でも治療できるようになりました。さらに近年は、溶連菌の迅速診断キットが医療機関に導入されるようになったので、10分前後で溶連菌の診断ができます。 早期診断・早期治療で糸球体腎炎やリウマチ熱などの発症を防げるので、子どもに喉の痛みや発熱などの症状が見られたら早めに受診しましょう。また、溶連菌は感染力が強いので、幼稚園や学校など、子どもの生活環境下で流行っている場合は、マスクや手洗いなどの飛沫感染への対策を念入りに行うようにしましょう。溶連菌は何種類もあるので、一度感染したからといって、かからなくなるわけではありません。溶連菌感染症が流行っている時期は引き続きマスクの着用・手洗いなどの予防を続けるようにしてください。
フリーペーパーmamacha 2021年4月号より
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